所得分散効果とは? 家族への給料支払いで手取りを増やせる
法人を使った節税の方法はいろいろありますが、今日は、その法人化メリットのひとつである「所得分散の効果」について、サクッと解説していきます。
やっていることはシンプルで、簡単に言うと「給料を家族などに払うとトータルの税金が安くなる」仕組みです。
安くなるカラクリは、個人の所得税率は累進課税(5%~45%)なので1人に給料を集中させると手取りが少なくなるので、みんなで別けて1人当たりの給料水準を下げて低い税率で税金を払いましょうということです。
さらに、税率だけでなく給与所得には「給与所得控除」という経費のようなものが認められていますので、収入額に応じて55万円~195万円のマイナス効果があります。また、基礎控除の48万円も同じように分散した人数分だけ所得をマイナスさせることができます。所得を減らす控除も2重取りができるということです。
上図の計算結果を見ると、分散前と後で給料合計は同じ額なのに2人の手取り合計は増えています。
家族や親族も勘案して世帯全体で資産が増えればいいという考え方が受け入れ可能であれば、所得分散は人数が多ければ多いほど得をします。
べストな配分のシミュレーションは条件次第
設例では単純に50%ずつ分けましたが、いくらずつ配分するのがベストなのか算定するのは結構大変で、もっとも手取りが多くなる金額を算定するには、社会保険料の負担や配偶者控除・扶養控除などの影響を勘案して設定する必要があります。
夫婦で別ける場合のベストな役員報酬の配分はまた別の記事で扱います。
最大化を目指す人は顧問の公認会計士・税理士に相談して決めてください。
注意点:分散は自由に金額設定できるのか?
所得分散する際の注意点としては、給料の水準は自由に設定できるわけではなく、勤務している実態がないと脱税行為としてペナルティを受けるので、嘘や不正はないように給料の設定が必要です。
それでも、非常勤役員というポジションでしたら経営方針への関与、取締役会への参加などだけでも全額経費として認められるので、少しでも多く会社の意思決定の場に参加するというやり方もアリです。ただしこれも報酬の水準次第なところではありますので、世間一般とかけ離れた非常識な金額にしないよう注意が必要です。
個人事業主の所得分散(青色専従者)の場合
個人事業主でも家族に対する給料を経費にして所得分散することは可能ですが、同居している場合は「専従者」である必要があります。
専従者は年間6ヵ月以上従事することが要求されますので、非常勤的な働き方だと経費として認められなくなってしまうところが、会社の中で役員・従業員として働く点と大きく異なります。
ちなみにこの数値例はもともと会社を設立していて役員報酬を分割するケースを前提としていますが、個人事業主で所得1000万円の場合は手取りが654万円ですので、法人成りと同時に所得分散する場合は最大で約120万円手取りが増える可能性があります。
相続税対策の基本戦略としても有効
この所得分散は、相続税対策にも活用できます。
例えば、賃貸アパート収入のある方が不動産管理会社を設立して、子供・孫に会社で賃貸経営をしてもらい給料を支給することにより、将来の相続財産の増加をおさえることができます。
最後に本当にちなみにの話ですが、上場企業の社外の非常勤役員(社外取締役)は、当然会社の業務に関与していませんが、2か月に1回くらいの経営会議への参加のみで月額150~200万円とかもザラにあります。
一般的な感覚からはズレていると感じるかもしれませんが、法曹界や医師会のトップなどでエリートな経歴を持つ方々ですから、知見レベル・ビジネス経験が豊富で話されている内容や会社経営への意見はとても高度でレベルが高いです。実際に会議に参加しているときは何を質問されるか常に緊張をしていなければなりません。