いくら減るの?法人の節税対策
個人事業主から法人に変更すると節税対策の幅が大きく拡がります。そもそもの制度・仕組みの違いから特に節税対策を取らなくても、法人税の税率の低さ、赤字となった場合に繰り越せる期間の長さ、損益通算に制限がない等は、会社を設立して法人化すれば自然体で享受できるのが最大の利点です。
加えて、個人事業主・フリーランスでは認められない法人だけの節税対策がたくさんあります。それらを駆使すれば、会社や経営者自身のお金だけでなく、従業員の手取り額も増やすことができますし、退職する場合や相続する場合、ビジネスを手放す場合など、現役時代だけではなく長期的な視点からも法人は大きなメリットがあります。
法人の節税対策9選
法人になると、具体的にどのような節税対策ができるようになるか?どれくらい節税できるのか?といった点から代表的な法人の節税対策TOP9を紹介したいと思います。上手く活用できれば利益2000万円くらいの会社規模でも毎年500万円程度の節税が可能となります。
法人の節税対策の場合、個人事業主に比べて複雑なものも多く経営者自身で取り組むのが難しいと思いますので、実際に導入する際は税理士と相談して進めてください。
①家族への所得分散と給与所得控除
会社からの給料・報酬を経営者ひとりではなく配偶者に分散すると、所得税率を下げるメリットと給与所得控除のメリットが得られます。例えば2000万円を役員報酬とする場合、経営者ひとりに全額支払う場合と二人に1000万円ずつに分散する場合では合計の手取りが100~150万円ほど差が生じます。
会社の税金は変わりませんが、税率軽減と給与所得控除の効果により個人の手取り合計額が増えることに加え、将来の年金額の増加、経営者に借入金の連帯保証が生じたときの資産防衛の効果などがありますので、配偶者に働いてもらっている場合は最適な配分をすることがとても重要です。
②役員および従業員への家賃手当
役員が賃貸住まいの場合、会社で賃貸契約することにより法人の税金が削減され、個人としても実質的な手取りが増えます。ルール上、最低限の本人負担が無いと個人の給与所得として扱われますので条件をよく確認して適用する必要はあります。負担の目安としては、概ね家賃の20%~30%くらい負担していれば大丈夫な計算式になっています。例えば、役員が家賃35万円のマンションに30%の本人負担で住んでいる場合、個人の手取りが294万円増える一方、会社の税金が約88万円削減されます。
この節税対策は福利厚生として従業員にも適用が可能です。非常に効果が高く従業員の手取り額に対するインパクトが大きいので、会社によっては給料を下げてでも家賃手当制度を導入して従業員の待遇を良くしている企業もあります。
③家族・親戚へ役員報酬の支払い
家族や親戚に役員に就任してもらい、月額8万円・年間100万円の役員報酬を支払えば、個人への手取りが100万円増える一方、会社の税金が約30万円削減されます。人数が増えればその分同額の効果が得られるので複数いると効果が大きいです。
ポイントがいくつかあり、「役員として経営への関与実態があること」、「家族・親戚に他の収入がないこと」、「非常勤役員とすること(社会保険料の負担がなくなります。)」の要件を充たす必要がありますのでご注意ください。
ちなみに、個人事業主である家族・親戚や知人に役員や従業員として最低限の報酬を支払った場合は、その個人事業主の方はマイクロ法人での節約と同じ効果を得ることが可能ですので、非常にメリットが大きく喜ばれると思います。
④役員報酬・役員賞与の支払い方
経営者個人の手取りは、会社が支払う金額は同じでも役員報酬・役員賞与のもらい方次第で増やすことが可能です。これは社会保険料の仕組みが原因で、詳しい説明は割愛しますが、月額1円の差でも社会保険料の標準報酬が変わることと、もう一点は、報酬(給与)と賞与で社会保険料の上限が異なるためです。年間の給与が500万円でも約20万円手取りを増やすことができます。
さらに、会社の利益を役員報酬で上手く調整すれば会社に残る金額も変わります。資本金1億円未満の会社では800万円以下の利益に対しては15%(それ以上は23.2%)と低い法人税率が適用されるので、できるだけ利益800万円以下に近づくように役員報酬を設定するのがよいでしょう。
役員報酬での税金・手取り額のコントロールは最も簡単で重要な節税対策の一つになりますので、これらを組み合わせてベストな役員報酬を算出すれば毎年100~150万円程度節約することも可能ですので、役員報酬の水準は税理士と相談して決めるのがよいでしょう。
⑤株主配当の受け取り
株主でもある経営者には役員報酬の代わりに会社から配当で受け取ることが可能です。こちらも社会保険料の仕組みを活かした方法で、配当所得に対しては社会保険料がかからないため個人の手取り額を50~100万円程度増やすことができます。
こちらは「個人事業主+副業マイクロ法人」と同じ利点を、会社のビジネスひとつで得られるので、利益が2000万円位までは効果の高い手段になります。
⑥出張手当および福利厚生
出張手当も法人の経費として計上しながら個人の手取りを増やすことができます。社内規定を整備して手当を出す場合は給与所得の対象外になるので、役員と従業員に対して1泊につき数万円の手取りを増やすことに繋がります。
また、法人では要件を充たせば、役員および従業員の福利厚生制度として家族での旅行費用やレジャー関連施設のチケット代なども経費として計上することが可能です。その他にも昼食代の支給や社員旅行なども経費に計上することができます。生命保険(死亡保険や医療保険)も会社で負担することで役員および従業員の実質的な手取りを増やすことが可能です。
⑦消費税免税事業者
法人設立後2年間は消費税の支払いを免除することが可能です。例えば、売上3000万円、経費1000万円の会社では消費税が200万円掛かりますので、2年間の免除で400万円削減されるので影響は非常に大きいです。個人事業主の売上が大きくなり消費税の負担が生じるタイミングで法人化することにより、最大4年間の消費税が免除されます。
売上が非常に大きい会社やインボイス制度の導入に伴い課税事業者を選択した場合は、免税の取り扱いは受けられないので適用要件にご留意ください。
⑧複数法人を活用
事業ごとに法人を別けて複数の会社を設立することにより法人税と消費税を削減できます。中小企業の法人税率は利益800万円以下までは15%で、それ以上は23.2%と段階的に増えていくので、利益が800万円以下に抑えられるように複数の法人に利益を分散できれば1社増えるごとに約66万円の法人税が削減できます。また、上述⑦のとおり設立2年間は消費税の免税のメリットも享受できます。
⑨経営セーフティ共済
国が運営する取引先が倒産した際の保険制度で、月々の掛金を費用として計上できます。月額5000円~20万円と年間最大240万円経費に計上できますので、会社の税金が最大約72万円削減されます。
上限掛金は800万円までですが、40か月以上継続していれば元本は保証されますし、仮に取引先が倒産した際は保証・担保なしで8000万円まで借入可能です。また、貸付制度もありますので預金的な性格も有しています。最終的に返戻金を受け取った際に収益として計上されるので適切なタイミングで解約するようにしましょう。
会社を辞めるとき、売るとき、相続するときの節税対策
①役員退職金
会社から役員個人に退職金を支払うことで大幅な会社の税金の削減と個人の手取りを大きくできます。個人事業主だと退職金の経費は認められませんが、法人では会社を手放したり、後継者に譲る場合には会社から退職金を経費として受け取ることが可能です。退職所得は給与所得に比べ税制上の優遇がありますので同じ金額でも手取りが大きく変わります。例えば、20年勤務した後に3000万円を退職金で受け取る場合と同額を役員報酬(給与)で受け取る場合では、個人の手取りが約900万円も退職金の方が多くもらえます。
②会社の売却・M&A
会社の株式を第三者に売却した際の売却益に係る税率は約20%とかなり低い税率が適用されます。会社を手放してもよい場合は、経営者個人にお金を残す方法としては最も効果が高い方法となります。通常は役員報酬や配当で法人から個人へ資金を還流させますが、それらは総合課税で最大55%の税率がかけられてしまいます。会社の規模が大きければ大きいほど、この低税率メリットにより手元に残る金額が莫大になります。
M&Aの実務では、上記①の退職金を会社売却と同時に支給することにより、2重の税率メリットを得らえるようにスキームを構築します。
③相続税対策としての法人化
遺産となる財産が大きい場合は相続税対策にも法人化は有効です。子供などの相続人に法人の役員に就任してもらえば、給料として渡すことで実質的に相続財産を早く配分することもできます。また、退職金や不動産などの資産を活用して会社の価値を一時的に下げて、その間に会社の株式を生前贈与することなども法人ならではの相続税対策になります。
相続税は対策を実施している場合としていない場合で、簡単に数千万単位の違いが生じる税金ですので、まずは専門家に相続税対策の相談を始めることをおススメします。
さらに利益が大きくなったら・・・ 法人向け節税商品 数千万~数億円
事業が成功して何億円も儲かるようになれば、会社の成長投資と個人資産の増加をバランスよく考えていかなければなりません。法人向けには数千万円~数億円単位の節税商品が多く存在していますので、上手に使いこなしていくのも一つの手段です。
ローリスク・ローリターンの安全性の高い商品からミドルリスク・ミドルリターンの比較的リスクの高いものまでありますので、商品の内容をよく理解して、ご自身のリスク許容度に合った節税商品に取り組むのがよいでしょう。
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