夫婦経営でいちばん手取りが多くなる役員報酬は?
日本は同族企業が9割以上を占めており、その中でも夫婦で会社経営している方は多いと思います。共同経営とまではいかなくても配偶者に事務手続きなどをサポートしてもらっているというのもよく見る光景です。
税金面では所得分散効果があるので、儲かった利益(所得)を複数人に給料で配分するのと手取り金額を増やしやすいです。夫婦以外にも親族がいればより効果が高まるので分け合うことを受け入れられるならできるだけ多い人数で配分する方が得です。
夫婦それぞれの役員報酬をいくらにすれば、手取りが最も多いのか?
夫婦2人で分け合う場合、経験上、面倒なので50:50にしているケースや過去に決めた水準を変えず何年もずっと同じ額にしている方も多いです。
実際、会社の利益水準に応じてどう配分すると手取りが多くなるのか数値で見てみましょう。
単純に半分ずつにするというのがベストではないことが分かりました。また、割合を固定しても常にベストな結果が出るわけではないということも理解できます。
前提の配分合計金額が変わると、最も手取りが高くなる配分割合も変わってしまうので、常にシミュレーションが必要となってきます。
ざっくりベストな方法で言うと、利益が1500万円くらいまでは配偶者を100万円で固定しておいて、それ以上利益が増えてくると50%ずつにすると、大きく損をすることはないでしょう。
※実際にシミュレーションする場合は、他の収入の有無や社会保険料負担、配偶者控除などの影響を受けますので、前提条件を適切に加味してください。
会社負担分の社会保険料が重い
上記は会社が負担する社会保険料を考慮していません。会社オーナーの場合は会社が負担する社会保険料も考慮しなければなりません。社会保険の加入義務の要件となるのが、給与収入が130万円超えてからなので、試算が面倒であればとりあえず一方の配偶者の役員報酬を130万円未満と設定するのもおススメです。(いわゆる130万円の壁)
こちらもざっくりベストな方法は?というと、2000万円くらいまでは配偶者を130万円未満で固定しておいて、2000万円以上では徐々に配偶者の割合を増やしていくと良いと思います。
さらに手取りを上げるスキームによる配分方法
上述のとおり、社会保険料の会社負担がかなり重いので社会保険料を減らす(節税)方法があれば手取り額がさらに増えます。ただし、社会保険料は給料に比例するので給料以外の方法で支給しなければなりません。
いくつか社会保険料を減らす方法はありますが、制度に対する専門的な知識が必要になりますので詳細は割愛しますが、「賞与スキーム」や「配当スキーム」といったものを活用すれば配偶者への支給分を工夫することで大幅に社会保険料が削減されます。上図の例で見た50%ずつ配分のケースで比較するとさらに+50万円くらい手取りを増やすことが可能です。
税務署からよくある指摘
税務署は、業務への関与度合や会社への貢献度なども調査しますので、給料水準が実態からあまりにかけ離れていると指摘されるのでご注意ください。
銀行からの評価目線では
金融機関から融資を調達する場合には、銀行は決算書の内部留保(純資産)を見て、財務体質の健全性を確認しますが、利益をすべて給料で配分しているとマイナスポイントになります。
所得分散は良い節税なのでおススメではありますが、節税ばかりに目を奪われると本来の企業の目的からかけ離れていくこともあるので、企業の成長にも資金を配分することを忘れないようにバランスよく実施してください。