フリーランスの節税対策、この領収書は大丈夫?
個人事業主・フリーランスの方が支払う「所得税」・「住民税」・「事業税」・「国民健康保険料」は利益・所得の金額に応じて増えていきますので、できるだけ節税対策をして利益を抑えたいものです。さらに、売上が増えてくると「消費税」も大きな負担となってきます。
これらを本格的に節税対策を実施したい場合は、法人成り・会社を設立するのが最大の効果を発揮しますが、利益・所得がそこまで大きくないケース、さまざまな事情で個人事業主しか選択できないケース、マイクロ法人を運営しているケースなどの場合は、個人事業主のままで節税を考えなければなりません。
これだけはやっておきたい節税対策7選
個人事業主が簡単に取り組むことができて、追加のお金が出ていかない・戻ってくる節税対策 TOP7を紹介したいと思います。当事務所でもほぼ100%のお客様に実施していただいてる人気の節税対策になります。
このうちできそうなものを数個でもやっておけば200~400万円程度所得を減らすことができます。
例えば、元の所得が600万円の個人事業主だと約103万円の税金と国民健康保険料が節約されます(所得△300万円の節税対策、扶養なしの場合)。同じように元の所得が800万円の場合は約124万円の節約になります。このように非常におおきな金額が手元に残ります。
①青色申告の申請
税務署に申請すれば通常65万円の控除が受けられますので、お金が出ていかずに利益を圧縮できます。もしやってない場合は税務署に申請書を提出してください。e-Taxでも申請はできますので是非ご利用ください。他にも経費の範囲が広がったり、赤字を翌年に繰越したりできる等メリットがたくさんありますが、時々、申請されていない方に出会いますので確認してみてください。
少し注意していただきたいのは「青色申告の取消し」です。この青色申告は適切な決算書の作成・保存という要件を満たした人のみが認められる特典ですので、申告期限に遅れたり、脱税行為などが発覚した場合はペナルティとして青色申告が取り消されるので注意してください。少しお金がかかりますがご自身でやる場合は会計ソフトを導入するようにしてください。
②家賃の経費計上
自宅を仕事にも利用している場合は、個人事業主の経費として計上できます。家で事務作業だけをしているような場合でも経費にできますので賃貸物件にお住いの方は利益を圧縮できます。経費にできる家賃の割合は使用している面積・㎡で算出しますが、概ね家賃の5割程度までは経費に計上できると思います。
③接待費・交際費の計上
個人事業主の場合は接待交際費に上限はありませんので、支払った分だけ利益を圧縮できます。こちらは税金は減りますが実際に現金も出ていきますので過剰な支出には注意してください。取引先だけでなく潜在顧客との食事会やゴルフ、旅行費用などもビジネス上のお付き合いであれば経費に計上しても問題ありません。
④小規模企業共済への加入
個人向けの退職金・年金の支援制度でフリーランスの方が安心してできる節税と資産運用の王道です。月額1000円~70000円まで積み立てができて、月々の掛金は所得から控除できるので税金を抑えられます。年間にすると最大84万円の控除なのでその効果は大きいです。そして、将来の受け取り額も最大120%と安定した運用でことができます。また、途中で資金が必要となった場合には低金利での貸付制度もあるので銀行引き出しのようなイメージでも利用ができます。
一方で、短期間の解約で解約原因が廃業や法人成り等以外の場合は、元本が割れることもありますので条件をよく確認して解約してください。節税効果を勘案すれば元本割れのダメージは小さいと思いますので、多くの個人事業主におススメの節税対策です。
法人化した後も引き続き加入できますので、給与所得者となった後でも節税効果と将来の年金対策として利用を継続できます。
⑤iDeCoへの加入
iDeCoも小規模企業共済と同様に節税しながら将来の年金・退職金に備えるための国の制度です。個人事業主であれば月額5000円~68000円まで積み立てができ、年間の所得控除額は最大81万円です。
小規模企業共済との違いは、運用商品(投資信託)を自分で決めるので預金のような元本保証タイプから海外株式で比較的リスク・リターンの大きい商品まで自分のスタイルに合わせて選択することができます。もう一つは、解約が60歳まで原則できない点です。iDeCoは拘束性が高いので余裕資金の範囲内で実施するのがよいでしょう。
⑥家族への給料支払い
個人事業主でも家族への給料を経費に計上できます。配偶者や15歳以上の子供に対する適正な給料を経費にできます。仕事のお手伝いをしてもらっている場合は給料を支払って、利益を各個人へ上手く分散すれば節税につながります。こちらは税務署への申請やルールの適用要件がありますので、事前によく調べて実行してください。
⑦ふるさと納税
所得を減らすものではないので、利用しても税金、国民健康保険料は減りませんが、特産品・返戻品がほぼ無料で手に入るのでお得感は大きいです。近年かなり普及しているものの2022年の利用率は約12%にとどまっていますので、利用されていない方の方が大半のようです。個人事業主で所得500万円だと10万円分ほど利用することが可能です。
落とせる領収書・経費
ビジネスに関連する経費をできるだけ多く計上することが節税のカギですが、経費で落ちる領収書の中にも意外と思われるようなものが中にはあるかもしれません。判断が難しくグレーゾーンのものは事業との関連を考えて計上してください。怪しいものは証拠や説明文をちゃんと残しておけば税務署に聞かれた時も心配いりません。
①領収書のない経費
必ずしも領収書が必要なわけではありません。慶弔費用や電車の切符など領収書がそもそもない場合や紛失したなどで領収書がない場合は当然あり得ます。その場合は、出金伝票または現金出納帳などに適切に記録を残して内容の詳細まで分かるようにしておけば、経費として計上することは認められます。
②持ち家の物件取得費の計上
所有しているマンション・戸建て住宅で業務をしている場合、使用している割合の物件費を「減価償却費」として計上できます。賃貸じゃなくても大きい金額を経費にできるので節税効果は高いです。ただし、住宅ローン控除および売却益3000万円控除との軽減措置のとの割合按分も同時に発生するので、最良の選択をシミュレーションしてから取り組みましょう。なお、火災保険料や固定資産税も業務使用割合を経費に計上できます。
③親の持ち家で業務している場合
一緒に住んでいる親の所有する家の一部を利用している場合、たとえ親に家賃を払っていても家賃は経費に落ちません。その代わり、②と同様、使用している割合の物件費を減価償却費として計上できます。火災保険料や固定資産税も同様に経費計上は可能です。漏れていることが多い経費なのでご注意ください。
④自家用車を利用している場合
もともと持っていた自家用車を業務にも利用している場合は、取得費用のうち業務使用している分を減価償却費として経費計上できます。ガソリン代なども業務使用分は問題なく経費に落ちますので忘れずに計上してください。
⑤1年分の前払い経費
通信費や新聞図書費用など12ヵ月分の支払があり、年を跨いでサービスを受ける場合、支払った年の経費として全額落とすことができます。通常は適切に按分してその年分だけ経費計上するのが原則ですが、継続的に適用するなど一定の要件を充たした場合は認められます。想定より利益が大きくなった場合などに活用するのがよいでしょう。なお、ほかには火災保険料、リース費用や駐車場代も前倒しでの経費計上が可能です。
⑥医療費控除にできる治療
美容医療関係はビジネスに関係していない限り経費にはできませんが、禁煙治療やレーシックなどの目のレーザー治療、薄毛治療なども医療費控除の制度を利用できますので忘れずに領収書を取っておいてください。
大きく節税したい方向け
事業が成功して利益・所得が数千万円出るようになれば、何も節税対策をしないと儲けの半分以上を税金で支払わなければなりません。以下に紹介する節税対策は数百万円~数億円単位で効果を得られるものですが、難易度が高いものもありますので、実際に導入するにあたっては専門家へご相談の上、検討することをおススメします。
目安:数百万円単位
- 中古車を購入して早期償却で経費に落とす
- 経営セーフティ共済への加入
目安:数千万~数億円単位
- 会社を設立しての節税対策の幅を拡大する
- 不動産投資
- 太陽光発電事業投資
- コインランドリー投資
- 航空機リース
- 海外不動産投資